研究室の特色
最先端の医工学技術が実用化されるまでには、膨大な基礎研究の積み重ねの後、さらにその成果を臨床研究へと発展させてゆくことが必要です。この間、医学者、工学者さらには企業研究者間での密接な連携が不可欠となっています。しかし我が国の医工学研究の現状においては、それぞれの研究者が別個の組織に所属したまま共同研究が行われているため、その連携が希薄なものになってしまいがちです。その結果、医学者は最先端のテクノロジーと接する機会が少なく、一方の工学者にとっては先端医療が必要な患者や臨床の現場が遠い存在のままでした。このため臨床ニーズとはかけ離れた技術開発が行われてしまうことも多く、医工学分野において米国に後れをとった大きな要因となっています。
当講座ではこれまでの我が国の医工連携のあり方を刷新し、医学者と工学者、企業研究者が基礎研究から臨床研究までを終始一貫して共同で行える体制を整えています。研究スタッフの半数は機械工学、情報工学あるいは化学を専門とする工学者が占めており、工学の基礎理論・知識の集積や実践的技術を臨床医学と再構成・統合化した、まったく新しい国際的な医工学の研究拠点を目指しています。その開発目標は次世代の超低侵襲手術支援ロボットを中心とし、超早期の病変を瞬時に検出する分子イメージング技術やその診断情報をロボット制御とリンクするためのナビゲーション技術など、研究の企画段階から臨床現場のニーズを取り入れた、より実践的な開発目標を設定しています。
そして平成23年春には経済産業省の支援のもと、九州大学 馬出キャンパス内に『先端医療イノベーションセンター(Center for Advanced Medical Innovation)』が竣工します。このセンターはインテリジェント手術室、免疫・再生治療のための細胞調製施設(CPC)、GMP対応 製剤化室、そして専用の臨床試験設備を備えた我が国初の医工学総合研究開発センターとして誕生します。本講座はイノベーションセンターの中核メンバーとして参画し、先端医工学領域における臨床開発力のさらなる向上を目指してより一層研究を推進してゆきます。